中へ入れば、山と詰まれていた楽譜は棚の中へ姿を消し、ばらばらになっていた紙切れも、綺麗に積みなおされていた。
「お帰り、金やん」
「おー、見違えたなぁ」
「頑張ったもん」
「では、そんな頑張ったお前に褒美をやろう」
「え?なになに?」
「ほれ、天羽から預かった写真だ」
さり気なく封筒に入ったものを差し出したつもりだが、それを見たの顔は、まるで火がついたように赤く染まっていた。
「ぴぎゃああああっ」
「おいおい、どうした」
「なっ、なっ、なっ…」
「お前さんが今日必要だからとかなんとか言ってたぞ」
「それはそうだけども」
余程慌てていたのか、受取る時に手がすべり、封が閉じられていなかった写真は見事に床にばら撒かれた。
「あぎゃああああっ」
「あー…そんなに騒がんでも、見たりしないっつーの。いいからゆっくり拾え」
そう言うと、に背を向け机の上に乗せていたプリントに手を伸ばす。
「見ないでね!絶対こっち見ちゃ駄目だかんね!」
「へいへい…」
音を立てて拾い集める音が、静かになった頃合を見て振り返れば、床にはいつくばっていたの姿はそこにはなく、既にドアの前に鞄を抱えて立っていた。
「あの、片付け、続きっ、明日やるから!」
「…ん?」
「ま、また明日ーっ!!」
「慌しい奴…」
苦笑しつつ、あいつのいた形跡が色濃く残る部屋の空気を変えるため、窓を開ける。
日が落ちて、少し涼しくなった風が頬を撫でる。
「日が落ちると、まだ暑さも和らぐな…」
沈む夕陽を見ながら一服でもするか…と、ポケットに手を入れて煙草とライターを取り出そうとした瞬間、ライターが床に落ちた。
「おっと」
それを拾おうとしゃがんだ時、机の下に何か落ちているの気づいた。
「…忘れ物か?」
別段、見るつもりのなかったもの。
けれど、それを拾い上げた瞬間、何気なく目に飛び込んできた写真に、思わず息を止めた。
「………反則だろう」
がっくり肩を落として、派手なため息をつく。
「こんな表情…見せられちゃたまらん」
俺の手の中にあるのは、窓辺でどこか遠くを見ているの写真。
撮影者の腕もあるのだろうが、その瞳は、視線の先にある者に対して、明らかに想いを込めて見つめているのがわかる。
そして、どこか幸せそうに微笑む表情は…まるで、天使の微笑みのように見えた。
なんか無駄に長くなった。
ただ単に、金やんを見てる時に写真を撮られたんです、天羽ちゃんに。
そんで、誰を見てたのとか問い詰められたりもしたんだけど、なんとか言い逃れて(笑)
で、その写真を拾い損ねた…と。
ちなみに天羽ちゃんがくれた写真の半分以上は、金やんの写真(笑)
主に天羽ちゃんのお財布が豊かになるように、趣味で撮られたものを譲って貰ったのです。
こっそり買ったのに、本人に手渡されりゃ、そりゃ大パニックですわな。
えー、そんでこの拾い損ねた写真は、後日金やんがさり気なく気づくようにして返してくれる予定です。
で、付き合い始めたら、それについて突っ込んだりすればいい!(笑)